ちょっと前に買っておいた本、『捨てられないTシャツ』をやっと読みました。
結論から言うと、面白すぎ!
軽い気持ちで読み出してみたものの、それぞれのストーリーにどんどん引き込まれてしまって、次から次に出てくるおいしい料理をたらふく食べた後のような満腹感ならぬ満足感。
もう読まれている方もたくさんいると思いますが、オススメです!
エヴリ Tシャツ テルズ ア ストーリー
『捨てられないTシャツ』は、『TOKYO STYLE』『ROADSIDE JAPAN – 珍日本紀行』『珍世界紀行』『ヒップホップの詩人たち』など、独特な着眼点とテーマでエッジの効いた作品を世に送り出しているライター/編集者/写真家である都築響一氏の近著。
序文の「エヴリ Tシャツ テルズ ア ストーリー」には、このように書かれています。
いつごろからか「ヨシなのかダメなのか判断に迷う」Tシャツには、本人の確固たる意志や、根拠のない自信や、個人的な記憶が染みついていることがあるのに気づいた。
この”気づき”から、都築響一氏が自身の週間メールマガジン「ROADSIDERS’ weekly」でスタートした連載記事。それをもとに一冊にまとめられたのが本書というわけです。
確かに電車に乗ってたり、街を歩いていると「判断に迷う」Tシャツを着ている人を見かけたりすることが多々あります。「あの人、なんであのTシャツを着てるんだろう?」って。
でも実はそこに”確固たる意志や、根拠のない自信や、個人的な記憶”があり、それをもとに語られる物語があることに気づいて、それを一冊の本にまで仕上げてしまう独創的な視点、そこがやはり都築響一氏の凄いところであり、本書を面白くさせてるところ。
作り話のように聞こえる実話
70人の人達が選んだ70枚のTシャツ、そしてそれにまつわる70とおりの物語で構成されている本書。
メールマガジンでの連載当初は、都築響一氏が持ち主からTシャツにまつわる思い出を聞いて、それに略歴などを加えた短い文章だったものが、持主本人に書いてもらうのも面白いかもと思うようになり、最終的には70枚のTシャツのうち、半分以上が持主による文章が掲載されているとのこと。
だからなのか、語られてる物語には異様な生々しさがあります。もちろんユーモラスなものもあるし、素敵だなと感じるものもありますが、中には「これ本当?!」と思えるくらい悲惨な思い出を綴った「作り話のように聞こえる実話」も。
たった一枚のTシャツを題材に、人はここまで人生や思い出について語ることができるのだということに驚きます。でもそれは実は人それぞれに、いいも悪いも含めて語れる物語があるということなんですよね。
都築響一氏は、「捨てられないTシャツ」を触媒として、人々の物語を伝えてくれているわけです。素敵です。
自分にとっての「捨てられないTシャツ」
自分でも「捨てられないTシャツ」を選んでみました。以下は、その説明文。
音楽が好きで今でも新譜含めてよく聞いたりするけど、いまだに10代後半から20代始め頃に出会った曲に魅力を感じてしまう。時代はちょうど80年代前半〜中期。パンク〜ニューウェーブの流れからジャマイカのレゲエ、アフリカとかのいわゆるワールドミュージックなど、未知で刺激的な音楽がどんどん紹介されてた。
それほどお金があるわけではない中、買い集めていったレコードの中によく見かける「ヤシの木」がデザインに入ってるレーベルがあった。それがBob Marleyなどの作品を出してる「アイランド・レコード」のロゴ。インディーとしてスタートして、ロックの名盤を多数出したり、レゲエを世に知らしめたり、常に時代の一歩先を行く新しいアーティストやジャンルを手がけたり、いまだに最も素晴らしいレコードレーベルだと個人的には思っている。
このTシャツは、10年近く前に下北沢の古着屋で見つけたもの。おそらくジャマイカの観光地オチョリオスで売られていたのであろうお土産品。「アイランド・レコード」っぽいヤシの木と「JAMAICA」とプリントが入ってるところ(単純なレーベル・ロゴのプリントTでないところも)が気に入って、つい反応して衝動買いしたのはいいけど、当時は古着をほとんど着る習慣もなく、ましてTシャツと言えばソリッドな無地ものばかりを好んで着ていた時期で、袖に通してみたのは1度か2度くらい。その間に何度かいらなくなったTシャツを処分してるけど、やはりこの「ヤシの木」が気になって捨てずにいる。#捨てられないTシャツ #都築響一